2018年4月5日

平日の天国の歩行者 セキグチ君(14歳)



セキグチ君は思う。
昨日の晩観た映画の主人公のように、
ミュージシャンになる夢を追いかけて
学校を辞めて、ギターとボストンかばんひとつでワイルドに上京できたら
どんなに気持ちがいいかと、

こんな想いを抱きながら、
いま歩いてるこの道が、田舎道なら絵になるけれど、

ここは銀座のマロニエ通り。
ここはセキグチ君の通う中学校の通学路。

学校からの帰り道、
空き缶を思い切り蹴りたい気分だけれど、
セキグチ君の目に止まるものは、
せいぜい空になったスターバックスの容器がひとつ、
ビルの消火栓の下に控えめにポツンと置いてあるだけだった。
それすらもきっと、すぐに掃除されてまた元どおりになるだろう。

「ああ、
 ここは文化が溢れている上に
 いつも綺麗に整備されていて
 まるで天国みたいな場所だなぁ!」と

悔しさを滲ませて、
ブルガリの前で地団駄を踏んだ足音はあまりにも乾いていて、
きっとセキグチ君にしか聞こえなかった。