2015年5月1日

思い出レプリカ





懐かしくて嬉しかった思い出を、
時々引っ張りだしては、胸をときめかせて、心を弾ませて、
誰にも見られないようにひっそりと笑っていた。

「しかしその思い出は、以前あなたが
 まるで本物のように、精巧に作っていたレプリカですよ」と
誰かさんにささやかれた。

じゃあ本物の思い出はどこですかと訪ねたら
そんなものは、はじめから無いではありませんかと
誰かさんはそう言った。

わたし、前にあなたに会ったことがありますよねと
誰かさんにきいたら、
あなたが作ったレプリカの思い出の中で
会ったことになっておりますと笑われた。

あなたは私の絵をはじめて買ってくれた、
丸めがねをかけたあの人ですかと聞いたら、
誰かさんはそうですと答えた。