2015年9月16日

ギターの下手な男と二秒間しか咲けない黄色い花の小競り合い






男のクサクサした心のクサで草原ができた。
そのクサむらの影で男はひとり、ギターの練習をはじめた。
クサクサしたクサった心で、毎晩毎晩、男はそこでギターを弾いた。

そのギターの音を聴きながら、
クサクサのクサはニョキニョキ伸びて、
小さな黄色い花を二秒間ほど咲かせた。

二秒咲いては枯れ、二秒咲いては枯れ、
毎晩毎晩、同じ場所で
クサクサのクサの花も
クサクサしながら少しでも長く咲く練習をしている。

花は言った。
「お前のギターの音がひどすぎるから、私達はすぐ枯れるのだ」
男は言った。
「お前がちゃんと穏やかな咲きかたをしないから、
 いつまでもいい音が出ないのだ」

男はその日も相変わらずクサクサした心のクサむらの影で、
咲いては二秒で枯れる黄色い花のそばで
クサクサしたクサった心で、ギターの練習をしている。
音痴だが、気まぐれに歌も歌ったりしている。

毎晩毎晩。かれこれ二十五年。

黄色い花は、前よりも少し長く、
およそ三秒間咲けるようになった。