2016年2月25日

落とし穴の底は宇宙





ある日、突然落とし穴に突き落とされたハナエさんは、
落ちて落ちて、落ちに落ちて、
自力で這い上がるのも不可能なくらい真っ逆さまに落ちていった。

もういっそのことこのまま落ちきってしまえと
やけっぱちになり、それに身を任せ落ちていった。

抵抗したって無駄だった。

落ちている間、とてもヒマになったので、
穴の断面を眺めたり、
歌を歌ってみたり、
穴の断面のにおいを嗅いでみたり、
あくびをして少し眠ったり、
穴の断面から小石を記念に持ち帰ろうと捕まえたり、
前髪を何度も直したりしていた。

まだかまだかとドン底を待ち望んだ。
しかし落ちに落ちていった先には底なんてものはなかった。

抵抗したって無駄だった。

落ちた落とし穴の入り口が完全に見えなくなって、
絶望的に真っ暗になった時、
次は足下の方からうっすら光が見えてきた。
どうやら穴は地球の反対側まで続いているようだった。

ハナエさんは、ただ抜けていくだけだった。
ある日突然、地球の反対側の穴から飛び出す形で、
空高く放り出された。
高く高く飛び上がり、上がって上がって、上がりに上がって、
そのまま宇宙まで突き抜けた。

抵抗したって無駄だった。

ハナエさんはいま、
誰よりも高いところから景色を眺め、
地上に降り立つ準備をしている。