2017年2月22日

窮鼠



人生が変わったわけではない。
ミチルさんの思い出が変わったのだ。

ミチルさんは最近、
眉をひそめて過ごしていた時間より、
楽しかった時間を思い出すようになった。

というより、眉をひそめてた惨めな時間も、
面白かったと言えるようになったのかもしれない。

もしくは、眉をひそめてた寂しい時間すら、
眩しくて憧れるものになったのかもしれない。

人間に戻る日が近いのかもしれない。

ネズミになってしまったミチルさんは
いっそのこと永遠に嘆き悲しんでいたかったのに、
人間の頃の思い出が、
片っ端から愛おしいものに変換しはじめていた。

それでミチルさんの人生が変わるわけではないが、
人間に戻ったら、
ミチルさんがネズミになることはもうないと思う。