2017年4月9日

「今日も生きる力が湧いてきた」



注文したとんかつが運ばれてきた。
大好きな大好きなロースカツ定食がいま、目の前に運ばれてきた。
キャベツも山盛りで、暖かいしじみ汁に
大根きゅうりの小鉢付きである。

ああ、
きっと口の中でひろがる肉汁とか、
不揃いで食べ応えのあるころもとか、

自分の全ての神経が、
これから食べる大好物のロースカツ以外のものに使うのは考えられなくて、
必死になりすぎて私は犬になりそう。

ようやく運ばれてきた瞬間から、口にするまでのとてもわずかな時間の

カウンターにある箸を取る手が、
取った箸を揃える手が、
揃えた箸を持つ手が、
持った箸を開く手が、
気持ちに追いつかなくて、早く早くとおぼつかない。

ああ、カツを口にする前に
礼儀正しくしじみ汁をちょっと口にしないと。
そういう人間らしい行為を挟まないと、
そのままの勢いで本当に犬になってしまいそう。

そう思ってしじみ汁を少しすすって、
なんならキャベツもひとくち口にして、
それでは、私はこれからロースカツを「いただきます」と
そのように声に出した時、

私は目が覚めたのである。
時刻は朝の650分。

最大限に増幅した、このとんかつに対する欲望だけを、
現実に持って帰ってきてしまった。
これは、ちょっとした事件だし本人はパニックである。

ああ、夢の中で、人生の続きをしたかった。

今日のお昼はとんかつにしよう。
そのために今日も生きる力が湧いてきた。