2017年11月30日

ラジオの時間



ウシオはラジオを聴いている。
正確には、録音したラジオを聴いている。

ウシオが地球にたった一人残って、早五年。
ラジオ番組を地球上で作ってくれる人はもういないので、
手元に残っているこの録音したラジオ番組の一回分のテープを
今日までにかれこれ一万回聴きつづけている。

この日、ウシオは新しい発見をした。

五年間、毎日毎日聴いていたこの録音したラジオの、
一万回再生し続けて飽きを通り越し何も思わなくなっていたこのラジオの、
もはや空気のように延々と流し続けていただけのこのラジオの、
番組のパーソナリティの会話もひとつ残らず記憶してしまったこのラジオの、
五年前に放送されたものを延々と聴きすぎて
地球に残ったウシオの寂しさを、より際立たせる存在になってきた
このラジオの、

五年前のこのラジオのパーソナリティが、
は、
時空を超えて今から五年先の未来からやって来て喋っていたことに気づき、

一万回再生し続けて、最近は虚しさしか感じられなかったこのラジオは、
今日のウシオによって新しく生まれ変わった。
ウシオにとっては、一万一回めにして久方ぶりの感動である。

ウシオと一緒に暮らしていた親友のモトム君すらも
二年前に火星に行ってしまった中で、
ウシオはたった一人で地球に残ったことを、
これであと五年は、頑張って誇りに思えると思っている。