2018年4月5日

平日の天国の歩行者 セキグチ君(14歳)



セキグチ君は思う。
昨日の晩観た映画の主人公のように、
ミュージシャンになる夢を追いかけて
学校を辞めて、ギターとボストンかばんひとつでワイルドに上京できたら
どんなに気持ちがいいかと、

こんな想いを抱きながら、
いま歩いてるこの道が、田舎道なら絵になるけれど、

ここは銀座のマロニエ通り。
ここはセキグチ君の通う中学校の通学路。

学校からの帰り道、
空き缶を思い切り蹴りたい気分だけれど、
セキグチ君の目に止まるものは、
せいぜい空になったスターバックスの容器がひとつ、
ビルの消火栓の下に控えめにポツンと置いてあるだけだった。
それすらもきっと、すぐに掃除されてまた元どおりになるだろう。

「ああ、
 ここは文化が溢れている上に
 いつも綺麗に整備されていて
 まるで天国みたいな場所だなぁ!」と

悔しさを滲ませて、
ブルガリの前で地団駄を踏んだ足音はあまりにも乾いていて、
きっとセキグチ君にしか聞こえなかった。






2018年2月22日

春は百パーセントもうすぐそこですよ!!! (^○^)/≡☆





春はもうすぐそこである。

どんなに今が冷え込んでいても、
どんなに暖かさを信じられなくても、
どんなに穏やかな時間と無縁に思えても、
たまによぎる暖かい日を、素直に受け入れることができなくても、
次の桜までにはと掲げてた目標が達成できそうになかったとしても、
部屋の植物を枯らしてしまったことは寒さを言い訳にし続けたくても、
さらに欲を出して、全てのことはこの寒さを言い訳にし続けたくても、
ずっとこのまま永久にこたつに入っていたくても、
いっそのこと春はもう少し待ってくれないかと、どれだけお願いしたとしても、

このまま普通に進んで
ちょっと行った先の道の角を曲がったら、
もうすぐそこが春である。

いまどんな時間を過ごしていても
この後は必ずたくさんの花が咲き始めて、
キラキラした光が溢れてきて、
春の風が吹いてきて、たくさんの命の匂いも立ち込めて
朝も起きる時間に日差しが差し込んで、
夕方帰る時間に夕焼けで、
暖かく、穏やかで、緊張も和らいで、

楽しい時間が嬉しくて、嫌な時間も楽しくて、

そしてそれがちゃんと普通なことになるくらい、
春はもうすぐそこである。
春は必ずやってくる。
百パーセントの可能性で、もうすぐそこなのだ。




2018年1月5日

空を飛べる条件



線路沿いを散歩中、
晴れやかな空を飛んでいる鳥を見て
ケイさんは毎度のことながら、

「いいなぁ」

と呟いた。
するとすれ違いざまに老犬がこう言った。

鳥は空を飛ぶために、歯を捨てたのだ。
 お前にその歯を捨てる覚悟はあるかい?」

老犬の言葉に、
ケイさんは返事をすることなく
引き続き、黙って散歩を楽しんだ。


今日も天気が良くて、
とても気持ちがいいもんだ。